出し」「大々的すて売り」「上等舶来、手袋有※[#ます記号、1−2−23]」などと書いたのがバタバタ云って居る。東京で歳暮の町を歩いて一番目につく羽子板等はあんまり飾ってなく、あれば色取った紙を板にはりつけた二三銭のか、それでなければ八重垣姫や助六等を粗末な布で押し絵にしたものばかりである。凧の方がまだ見事に書いたのがある。まだ小学があると見えてそう子供は居なかったけれ共、十四、五からの娘達が頸巻をし、手を懐に突込んで、雑貨店だの呉服屋の店先に群らがって居る。大抵は日本髪にして居る。此処いらの人から見れば、随分はでに見える着物を着て、大股にスタスタ歩く私を、いつまでも見て居るのが気に障った。化粧品店には、あざやかな掛ける人もないリボンや新ダイヤの入った大きな櫛や髱止《たぼどめ》が娘達の心を引いて光って居る。
「おともさん」が縫いあげた、帯だの、着物だのの賃銀を主屋の方に行ってもらって居る呉服屋の店先で、私は祖母の胴着と自分の袖にするメリンスの小布《こぎれ》を見て居た。出すのも出すのも地味なのばっかりなので、私は袂を出して見せて、こんな様なのを見せて呉れと云った。番頭は早口に遠慮なく出させ
前へ
次へ
全109ページ中92ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング