来て居るとクリスマスの「ク」の字さえ口に出ないので、私も忘れ気味になって居た。暮を知らない様に静かな此村で、年越しをするのもおだやかで好いだろう等と思う。
 町へ雑誌と、書く紙を買いに行こうと思いながら、寒さにめげて一日一日とのばして居たが、歳暮売出しを町の店々は始め、少しは目先が変って居るからと云う事で、芝居ずきの「御ともさん」とお繁婆と女中とで午前の日が上りきって、暖い時に出かけた。
 頸巻《えりまき》はいくら毛でも鼻の先がひどくつめたい。祖母は、足袋の先に真綿を入れて呉れたので足はいくらか暖かい。一本筋の高い処にある道を、静かながら北の山からすべり落ちて来る風にあらいざらい吹きさられて、足の遅《のろ》いお伴《つれ》と一緒に、私はもうちっと早く歩きたいもんだなあと思いながら歩いて行く。道はまだ、こちこちに凍った様になって居るので下駄が少し強くあたると破れそうな音をたてる。二枚重ねた銘仙の着物の裾がボタボタと重い。頭巾をかぶって来ればよかったとも思った。「御ともさん」は東京弁と、此村と山形――米沢の言葉をとりまぜた言葉でしきりに私に話しかける。芝居は好きか、どの役者が一番|好《い》い
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