わるべき老婆である。全くの孤独である。子も同胞《きょうだい》も身寄《みより》もないので家も近し、似よった年頃だと云うのでよく祖母の家へ話しに来るのである。
 年を取った象と同じ様に体中に茶色の厚いたるんだ皮がはびこって居て、眼も亦それの様に細く気がよさそうにだれて居るのである。大抵は白い様な髪を切りさげて体からいつも酸《す》っぱい様な臭いを出して居るが、それは必[#「必」に「(ママ)」の注記]して胸を悪くさせるものではなく、そのお婆さん特有の臭いとして小さい子供達や、飼いものがなつかしがるものである。笑う時にはいつもいつも頭を左の肩の上にのせて、手の甲で口を押える様にして、ハッハッハッと絶《き》れぎれに息を引き込む様に笑った。その様子が体につり合わないので、笑う様子を見て居る者がつい笑わされるのである。
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「まあ、貴方、郡山《こおりやま》(町の名)さ芝居が掛りましたぞえ、東京の名優、尾上菊五郎ちゅうふれ込みでない。外題は、塩原多助、尾上岩藤に、小栗判官、照手の姫、どんなによかろう。見たいない。
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 祖母の顔を見るやいなや、婆さんは、飛び立っ
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