を磨いでうなる猫と、腹立たしそうにクワンクワンと叫ぶ犬を取り巻いて居る事がよくある。向いの家の猫が自家の鶏を取った事から、気づ[#「気づ」に「(ママ)」の注記]くなった家なんかも有った。
家畜と云うほどの事もない、犬や猫に入り混って叫んだり、罵ったりして暮す子供等は、夏は、女の子は短っかい布を腰に巻いたっきり、男の子は丸のはだかで暮すのである。けれ共十四五から上のにもなれば、まさか、手拭で作った胴ぎりの袖なしだの、黒い単衣を着てなんか居る。
冬は、母親のを縫いちぢめた、じみいなじみいな着物を着て、はげしい寒さに、鼻を毒《そこな》われない子供はなく皆だらしない二本棒をさげて居る。
髪は大抵、銀杏返しか桃割れだけれ共、たまに見る束髪は、東京の女の、想像以外のものである。
暗い、きたない、ごみごみした家に沢山の大小の肉塊《にくかい》がころがって居るのである。
実際、肉塊が生きて居て地主のために労働して居ると云うばかりで、智的には、何の存在もみとめられて居ないのである。
けれ共此村には、彼等農民の上に立って居ると云っても良い半農民的な生活をして居る或る一っかたまりの人達が居る。
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