ア文化出版物のどこかに彼らの階級的意識を指導し、鼓舞し組織するモメントを発見しようと努力した。編輯者もまた不如意な階級的出版の状態からできるだけ読者の要求をとりあげたく思った。
一九三二年の後半期から三三年にかけて日本のプロレタリア文化運動が著しく政治的偏向をもったということが今でも一つの先入観になっており或は偏見となっている。そしてこれがプロレタリア文学運動誹謗の種子とされているけれども、この日本風な現象については日本風な専政支配の野蛮さと、大衆の生活に多様な階級的文化の組織がなかったこと、僅かに文化サークルが組織されかかっていたばかりであったことなどを考え合わせなければならない。
十月。左翼に対する弾圧激しく『働く婦人』『プロレタリア文化』『プロレタリア文学』等の発行は杜絶えがちになった。岩田義道が警察の拷問によって虐殺された。
    執筆
小説「鋪道」を『婦人之友』に連載中、検挙によって中絶。
[#ここで字下げ終わり]

一九三三年(昭和八年)
[#ここから1字下げ]
二月二十日。小林多喜二が築地署で拷問虐殺された。通夜の晩に小林宅を訪問して杉並署に連れてゆかれたが、その晩はも
前へ 次へ
全40ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング