〔八〕月まで中央公論につづけて「二つの庭」を書いた。これは二十数年前に書いた「伸子」の続篇であり、また、或る意味での日本インテリゲンチャの歴史ともいえる。十月から展望に「二つの庭」に続く「道標」を執筆している。
この年前半期は大体一ヵ月を三分して三つの仕事をした。創作、講演、集会への出席。そして〔四〕月選挙のときは岡山へ行った。これは私の健康にとって全く無理であった。七月に過労のため血圧が高くなりまた視力があやしくなった。そのため三ヵ月ほど休養した。
後半期は講演を全廃した。組織の会合にも欠席することを許して貰った。小説だけにしたこの仕事の割あては今日もつづいている。
一九四七年度の毎日出版文化賞が「播州平野」と「風知草」に与えられた。
    執筆
一月。二つの庭。(中央公論)作家の経験。
三月。政治と作家の現実。小説と現実。
五月。一九四六年の文壇。風知草。(文芸春秋社)
六月。本当の愛嬌ということ。
十月。道標。(展望連載)
十一月。真夏の夜の夢。デスデモーナのハンカチーフ。
単行本。『伸子』〔第二部〕。(文芸春秋社)播州平野。(河出書房)作家と作品。(山根書店)
貧しき人々の群。(新興出版社)歌声よおこれ。(解放社)幸福について。(雄鶏社)
宮本百合子選集第一巻、同第三巻。(安芸書房)
新しい婦人と生活。(民主主義文化連盟)真実に生きた女性たち。(創生社)婦人と文学。(実業之日本社)
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一九四八年(昭和二十三年)
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中心的な執筆は、小説「道標」である。民主的文学の分野には、昨年末から批評と創作の協力的前進の問題が起っており、勤労者の文学サークルの間にはリアリズムのみなおしの問題も起っている。これらの文学上の問題は、昨年四月以来次第に表面に出てきた日本のファシズムの危険と昨今の戦争挑発の現象とからみあっている。批評と創作の協力的向上の問題についての評論「両輪」を新日本文学〔三〕月号に書いた。戦争挑発と闘い、平和を確保するためにすべての文化人、作家、芸術家が共同の組織をもち、労働階級の組織と協力する必要がはっきりしてきた。小説の他に「平和のための荷役」(婦人公論)、「世紀の分別」(改造)、「日本婦人の国際性」の新しい展開について『女性線』に書いている。
単行本。
宮本百合子選集第四巻、同第五巻。(安芸書房)二つの庭。(中央公論社)女性の歴史。(婦人民主クラブ)女靴の跡。(高島屋出版部)道標(第一部)。(筑摩書房)
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[#地から1字上げ]〔一九四八年十月〕



底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年5月30日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「現代文学全集 第五十六巻」改造社(1931年までの年譜)
   1931(昭和6)年3月発行
   「宮本百合子研究」津人書房
   1948(昭和23)年10月発行
※見出しとして立てられた年表示の内、「一八九九年」などの西暦の部分はすべて、ゴシックで組まれています。
※「〔〕」で囲まれた箇所は、底本の編集に際して、明らかな誤りとして訂正されたものです。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年7月24日作成
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