かったでしょうと思いますが、ああいう事柄について、皆さんはどうお感じになったでしょう。私は、その感想を知りたく思います。まるで自分には関係のないことと見て過たでしょうか。それとも、自分たちなら、こうする、という風に思えたでしょうか。それとも、上野高女の生徒のこころもちに、同感をもって話し合ったでしょうか。
 自由のこころをもった人は、他人《ひと》の自由な心の動きに対して、感じやすいものです。思いやりと、判断とが早いものです。自分たちの同情なり、批評なりを、はっきり表現してゆく朗らかさをもつものです。
 みなさん、どうお思いですか、と訊かれて、何となし首を下げ互にさぐり合い、すぐ訊かれたことに答えられないのが、これ迄の日本の憐れな制服の処女たちの姿でした。これ迄の教育は、学校でも社会でも、つつましさ、女らしさというものを、無智や卑屈さと同じもののようにして、少女たちにつぎ込みました。
 行儀よく並んだ空壜《あきびん》に、何かの液体を注ぎこみでもするように、教えこまれるあれこれのすべてが、少女たちの若々しい本心に、肯かれることばかりではなかったことは確です。これ迄は、黙って、そっと、心にう
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