来て水の様な色がその髪を照らした時、
世のすべての純潔なものは皆その光線の下に集められたかの様に見える。
顔は銀色に光り髪は深林の様に小さい額の上にむらがりかかる。
「死」によって浄化された幼児の稚い美くしさはまぼしいほどに輝き渡る。
只見るさえ黄金色の輝きの許に有るものは美くしいものをまして照されてあるものはすべてのものからはなれて人間界からはなれた或る国に行って居るものだと信じられて居る死人である。
子供が魂しいに去られた後の姿ほど尊いものはない。まして水色と黄金色の許にあるそれは。
私の妹が生れたのは今から五年前の三月一日、雨が降って居た。
亡くなった九月十一日も雨が降り、小雨にけむる町中を私共は十三日に青山に行った。
雨に縁の深かった妹は雨の日に世に出て同じ様な日に世を去った。
何でもない事で居て私はやたらに思い出される。
私が斯うやって書いて居るのは何のためであろう。
書いているのが嬉しいのではない。
却って苦しみである。
思い出の涙は一行書く毎に頬を流れ、よしそうでないにしろ私の心は悲しさに満ちる。
けれ共私は書かないでは居られない。
不思議な
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