る。
五百余篇も集まった応募文から、何故そんな判りきった誤謬をもったこの一文が当選したのだろう? 答えは一つだ。
この「中條百合子様へ」は、ブルジュア・ジャーナリズムのやりかた、大衆の社会主義社会建設への欲望への毒針を、小さいながら形式において備えている。だから、これは一寸面白いというわけで当選したのだ。本当のプロレタリアートなら恥しいと思う階級的売りわたしで、当選しているのだ。
森鶴子という筆者は書いている。「今年の六月、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で開かれた全国経済委員会議でスターリンが五ヵ年計画の失敗を告白している。差別賃銀制が行われるようになった。集団農場から箇別農場へ、強制労働から自由契約労働へ転向した。これは重大な敗北だ。ソヴェト・ロシアのことなら何でもいいと云うかもしれないが、五ヵ年計画について気焔をはいていたお前はこの失敗について何というか?」ソヴェト同盟の五ヵ年計画を中條という箇人の特許品のように云う如何にも滑稽な小ブルジュア的間違いはとにかく、箇々の事実を調べよう。
森君は、どこの全国経済委員会でスターリンの演説をきかれたんだろう。ソヴェト同
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