まで、この問題にふれている。『新潮』の杉山平助氏の論文、『文芸』の大宅氏の論文を熱心に読んだのは、恐らく私ひとりではなかったであろうと思われる。二人の筆者は、いわゆる転向の問題賛否それぞれの見解を今日の現象の上にとりあげ、内容の分類を行い、問題の見かたをわれわれに示した。
 そもそも転向作家に対してその行為を批判し得るのは、抵抗しつづけている者だけであるという結論に至るらしい大宅氏の意見はもっともであるとうなずかれた。
 転向という文字が今日のような内容をふくんで流布するようになったのは、正確には去年の初夏以来であり、(佐野・鍋山・三田村その他共産党指導者たちが従来の帝国主義侵略戦争に反対するコンムニストたる立場をすてて、日本の中国に対する侵略行為に賛成し、支配権力に屈伏した時から)プロレタリア文学運動との関連で実際的内容をもつようになったのは特に今年になって、プロレタリア文学者・戯曲家その他の屈伏があらわれてからのことであると思われる。基本的にいなかるものから、どう転向したかということを明確に批判し得るのは[#「るのは」に×傍点、伏字を起こした文字]、抵抗者たち[#「抵抗者たち」に×
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