見当がつかなかった。ひろ子はひとりで二階へ上って見た。三畳のテーブルのまわりが取乱されている。テーブルの下の畳へ、ペン軸が上から乱暴にころがり落ちたまま突刺さっていた。しずかにそれをぬきとり、ひろ子はそれをいじりながら、夕方子供の迎えに来る親たちで、そのまま会合を持つ方針を立てた。それから下へおりて行って、小倉に一つの包みを託した。なかみは、獄中の重吉のための一着のジャケツであった。



底本:「宮本百合子全集 第五巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年12月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
親本:「宮本百合子全集 第五巻」河出書房
   1951(昭和26)年5月発行
初出:「中央公論」
   1935(昭和10)年4月号
入力:柴田卓治
校正:原田頌子
2002年4月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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