人のためになる催しだからです。雑誌を発禁にしたり、「働く婦人の夕べ」に不当な解散をくわせたりして、よくわけの分らない大衆の目に日本プロレタリア文化連盟というところをいかにもこわいところででもあるかのように思い込ませようとする、ブルジョア・地主の官憲の陰険極まるてなのです。真実われら働く者の味方となり、わたしらが読みたい雑誌を発行し、観たい芝居を上演し、講演会を催し、プロレタリア・農民の文化を高めようとする日本プロレタリア文化連盟から大衆を切りはなし、飢餓と戦争とを合理化するブルジョア・地主の反動文化へつき落す手段です。わたしらを一日も長く不幸なままの状態において益々搾りつづけようためばかりです。「働く婦人の夕べ」に加えられた敵の気違いのような弾圧は、決してただ一日のわたしらの催しにだけ加えられた敵の攻撃ではない。日本プロレタリア文化連盟の活動全体に加えられた理由のない弾圧です。とりもなおさずわれら勤労大衆がもっと仕合わせに暮したいと願って闘う、その闘いに加えられた弾圧なのです。
 わたしら働く婦人の一人として、失業をよろこぶ者はない。生理休暇の欲しくない者はない。ブルジョアどもを肥えふとらせるための帝国主義戦争で大切な男を殺させたい者はいない!
 われわれの日常のそういう数々の要求を文化の分野でとりあげ充たしている日本プロレタリア文化連盟を、わたしらが飽くまでも支持せずにおれない訳はここにあります。
 敵のこすい脅しのわな[#「わな」に傍点]にかからず、わたしらはわたしらの日本プロレタリア文化連盟を守ろう!『働く婦人』を守ろう!「働く婦人の夕べ」の記念、三月八日の国際婦人デーの記念のため、近づいて来たメーデーまでに『働く婦人』直接購読者を倍にふやそう!
 メーデーは、皆さんも御承知の通り世界のプロレタリア・農民の男女が一斉に立って、勤労階級の団結の力を敵の前に示威する国際的な日です。今から四十二年前アメリカとヨーロッパの労働者が数百万人が五月一日を期して示威行列を行ってから、日本では今年で第十三回目のメーデーが闘われようとしています。
 メーデーの示威に参加する勤労婦人の数は、年々増すばかりです。首キリ・賃下げ・労働強化絶対反対! 帝国主義戦争絶対反対! 同一労働に対しては同一賃金をよこせ! と叫んで工場から溢れ出す。特別今年のメーデーは戦争のために起った物価騰貴、労働条件の悪化、いくら戦争をしても減らない三百万人の失業者の苦しみ、労働者農民を絞め殺す白テロに抗して、勇敢に闘われなければならぬ時です。たとえばこういうメーデーがわたしら働く婦人の生活にとってどんなに大切な意味をもっているかということを、わかり易く私らに告げるのは、どの婦人雑誌でしょうか。『働く婦人』があるだけです。だからこそ、日本プロレタリア文化連盟や、そこから出る『働く婦人』をぶっ潰そうとかかるのです。
 わたしら働く婦人は日本プロレタリア文化連盟に加えるブルジョア・地主の政府の暴圧に絶対反対です!
 プロレタリア・農民を不幸にするしか能のないファシズムの文化に絶対反対です!
[#地付き]〔一九三二年四月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
   1952(昭和27)年8月発行
初出:「働く婦人」
   1932(昭和7)年4月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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