日本の河童
――火野葦平のことなど――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)臍《ほぞ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四一年一月〕
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生活の感情は実にまざまざと複雑になって来ている。作家がそういう今日の感情を生きているのだし、文学を読む人々の心にもその波動は在る。
作家とあれば、こういう時代だからこそ益々いい作品を書いて行くばかりだと、一層覚悟の臍《ほぞ》をかためるわけだと思うが、いい作品と自分に向って考えるとき、それはどのような作品として浮んで来るのだろう。
この答えは、作家一人一人によって様々であろうと思われる。その様々であるという現実が却って逆に反射して、ごく大掴みに国民文学というような表現が現われたり、その国民文学はロマンティックなものであるだろうというようなつきつめてみれば主観的な表現があったりするのでもあると思う。
私たちの足跡は、ほかならぬ私たちの足の下からしか現れないという意味で、一人一人の作家の必然の道がよきにつけあしきにつけ、その作家の文学の現実を決定してゆくし、
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