姓」と屡々《しばしば》繰返される両親から、物質的補助を心易く受け得る申訳として、家族の一員と成って其姓を犯す――此を彼にさせてよろしいものだろうか、
此点の決定は、自分を一家のペットとするか、或は又、主義、真理の追従者とするかに別れる。
自分は彼等の愛と、心痛とを明かに感じる事が出来る。然し……心にやましく恥じつつ、仮にも「真」を見出して生きようとする自分の生は続けられない。
考えなければならない。此は空想ではないのだ、自分が呼んだ巨人におびえるのは自分か。
此の問題を決定するまでに、自分はどこか静かな田園に考え場所を求める。
一九一八年十月二十三日[#「一九一八年十月二十三日」は太字]〔東京市本郷区駒込林町二一 中條葭江宛 シカゴ(消印)より(“WILL THEY LAST”と記された諷刺絵の絵はがき)〕
此頃のアメリカの新聞は、講和問題で賑って居ります。独逸が潜航艇を皆引上げそうな事を云ったり、平和を要求したりするような顔をするが、実は、羊の皮を着た狼だ、要心しろ! と云うような事をしきりに云って居ります。
一九一八年十二月二日[#「一九一八年十二月二日」は太字
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