る農村が、郡山と同様の地租その他を負担させられると云うのは可哀そうなことです。
「でも、地価や何かがあがるから少しは今とは違うでしょう。
「いやそうです。然しですな地価が上ったからと云って、農民には直接収入の増加とはなりません。従って、実力以上の負担を負うのは気の毒ながら何とかして町との均衡を保つために一つ私の考える事、持論があります。
 ちっと話が大きくなりますが」――彼は大鉢の縁で煙草の灰を叩き落した。
「つまり此の大神宮を昇格させようとする事なのです。そもそもの始りがです、維新の始、賊軍として、長い間反目されて居た此の東北地方に、尊王奉国の中心として大神宮を建てたらよろしかろうと云う有難い大御心から、わざわざ伊勢大廟の分祠として祭られたものなのですな、それを斯のように荒廃にまかせて置いてよいものなのかどうか――と斯う考えました。それで町の有志ともはかって、十万円ばかりの余算[#「余算」に「ママ」の注記]で、内苑外苑からすっかり改築して、伊勢まで行かれない人々は、此処へ来て、お参〔以下欠〕

 四月二十七日[#「四月二十七日」は太字]
 今日大学の大通りを散歩して、計らずも、久しい
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