ひどく降り、あとからは泣く様に降った。
今日始めて勉強部屋に来て見た。
五月十三日(水曜)晴
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕欠席
[#ここで字下げ終わり]
蕗が大変育った。うす黄のひよっ子も大きくなった。
部屋の前の紅葉は紅の若葉を絹糸の刺繍の様な色に輝ししめった黒土の上に落椿はなさけない形をして置かれた。軒から松の心にかけたクモの糸が眼に光って私はうす暗い中にだまって座って長い間居た。
五月十五日(金曜)雨
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕欠席
[#ここで字下げ終わり]
大変気持がよくなった。
もうすっかりなおったと云っても好い。
六月八日(月曜)
漢文先生
六月十日(水曜)
漢文先生
六月十五日(月曜)
漢文先生
六月十七日(水曜)
漢文先生
六月十八日(木曜)
小此木先生の処へ行く。[#ここから横組み]“The rainy day”[#ここで横組み終わり]
白い小さい縫のセットの上に二三十ころっとしたサクランボーはほんとうにうれしかった。
六月十九日(金曜)
[#ここから横組み]“The day is cold and dark and[#ここで横組み終わり]
小雨のうす暗く降る空を見ながら誦すと一人手に思いが深くなる。
[#ここから横組み]“my thoughts still cring to the past.”[#ここで横組み終わり]
○幸、不幸、それははかりしれないものが司って居る。今の私は忘られ行く過去を憶う人とはなると思えない。
六月二十二日(月曜)
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕欠席
[#ここで字下げ終わり]
見えない小雨がして居る。
大工のかんなやかなづちの音もいいかげんにうるおうて響く。
内に居る日に見えない小雨はなつかしいものだ。
六月二十三日(火曜)晴
○五月雨時にまれな天気である。頭が軽い。
○大瀧さんに葉書を書く。
○紫陽花《あじさい》の群が重く咲き満ちた。
○白鳩の若き翼に夏の日の
黄金の色に舞ひ舞ひてあり
○若楓の青きを恋ひてしたひよれば
黒き毛虫は我肩を這ふ
○梨の葉の云ふ甲斐もなくしぼみ行きて
来ん日はなどしさうも愚や
七月六日(月曜)
不義の
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