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ストーブに赤きほのほのチラ/\と燃えつゝあれば誘はるゝ心
先丸き鉛筆をもてものかけば
うたうたひたき心地こそすれ
黄なるきれはぬいてあれば輝ける
小針もつ指この上なくもよし
縫ひてあればつね事なれど我指の
爪小さきも今更の如
一月三十日(金曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出席、作文「鏡」
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一月三十一日(土曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出席
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〔雑録〕
一月
一月十二日、クラシックは或る程度まで中々なつかしいはなしにくいものだと思う。
“「ねつかれない時に見る光りものと耳なりの響は馬鹿にして居ながらひょうげた可愛らしいものだ」
人間の運命、又時と云う事がワイルドの一代記を見て思わされた悲しかった。奇麗な顔と奇麗な言葉と感じとを思ったワイルドもさみしいとこに死ななければならない運命をもって居た。はなやかであっただけ美くしかっただけそこに大口をあいてパックとやった死がよけいにおそろしい見にくいそうして悲しいものに思われた。どんづまりには何にでも死がある。
二十日に「海の夫人」と「熊」を見て小さい批評を書く。
○私の試みの時が来た。私はつとめてこの間にいろいろな気持やいろいろそのほかの事を研究しなければならない。
悲しみ、淋しさと云うものの実の意味を賞観するほどの気持にならなければいけない。特殊の事柄は私の心地をどれ位変化させるかわからない。
私は私自分に感じるほどワイルドに魅せられて居る。あのペルシカショー□□[#「□□」に「(二字不明)」の注記]の様な文は私にどうする事も出来ない魅力をもって居る。
〔金銭支出簿〕
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月日 摘要 金高
一、四 三越にてリボン 一円八十銭
一、四 三越にて半衿 五十銭
一、五 『美術と文学』 一円
一、五 七面鳥 七十銭
一、五 『三田文学』 三十銭
一、五 ノート 十四銭
一、十二 「反省録」 十銭
一、十三 指ぬき 一銭
一、十六 スペンセリアン
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