んです。
はっきりしたら又お知らせ上ようと思ってますけれども、…………
小さいだるまさんのような弟さんによろしく。貴方よく風邪をひく方だから体を大切になすってネ。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から4字上げ]さようなら
[#ここから2字下げ]
姉さんのような
妹さんのような御方へ」
[#ここで字下げ終わり]
って書いた。
私より年上で居て私より妹のような人だから「姉さんのような妹さんのような御方へ」と書いたんで随分のんき□[#「□」に「(一字不明)」の注記]しぶいかおしたって□□[#「□□」に「(二字不明)」の注記]ないから私が大すきなんである。
七月二十五日
フンワリと包まれたような気持で目がさめた。「今日はキットよくいろんな事が出来る」と斯う思われた。一夜の間にあおいの花は散ってしまった。青い苔の生えたしっとりとした黒土の上に見すぼらしい、みじめな形をした花が六つほど一っかたまりになって落ちて居た。フット、壇の浦の波の底に沈んだ若い女をフカブカと思わされるような形をして……コスモスが日かげにありながらも大変大きくなってつっかえをしてやらなくっちゃあならないほどになった。あんな暗いじめじめしたところに居ながら、とあの細い茎や根のすみずみにまで行きわたって居る、生の力の偉《おお》きなのにびっくりした。それと一緒にその一枚の葉でもわけなしでむしると云う事がいかにもみじめに思われてあの細い躰から血がながれそうに想像された。
八つ手の白い葉裏にあかと黒の先《せん》だって中《じゅう》はやって居た黒地に黄模様のはん袴のようなテントー虫が三つ、ポツン――ポツーンポツーンと言葉に云ったらこんな工合に散って居た。こんな事を御飯すぎて庭に出て見つけた、八つ手のうらのテントームシは何となくそのまんま忘れてはすまないように思われたんで、短いものを一つにまとめて置いた。それから落ついた今までないような余裕のある心地で机に坐った。
数学と、英語と地理、これだけのしなくちゃあならない事をすましてから Beggar と云うのを読んだ[#「だ」に「(ママ)」の注記]見た。
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「丈の長い男と同じほどの又それよりも大きい体で
まるで海賊の女王としても似あわしいほどの女だった」
[#ここで字下げ終わり]
日本にこんな大きな立派な体の女乞食はまだ私は見た事がな
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