と思う。
子供の時からそう云う事にならされた者達は、馬鹿騒ぎをする事は何でもない、酒を飲んで居る時は、あらいざらいの馬鹿根性をさらけ出していいものと思って、ひどい間違った考えを持たせられるのである。
そんな事は、きまりきって居る事だけに余計危うく、みじめに感じられるのである。
そう斯うして居るうちに四五日は気のつかない中に立ってしまって、いそがしい仕事があったので、それに追われて外にも出ずに居るうちに二十三番地――孝ちゃんの家は空家になって居た。
鶏や何かをどうして行ったのだろう。
まさか背負っても行かれまいが、と思いながら、珍らしい気持がして、久し振りに誰はばかる事なく、すいた垣越しに、散らかった埃の中の孝ちゃんの清書だの、閉《た》て切った雨戸の外側に筆太く「馬鹿」と書いてあるのをながめて居た。
底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
1986(昭和61)年3月20日第5刷
初出:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2008年9月25日作成
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