日遊びに来た女の子にきいて見ると、
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「会津へ行くからなのよ。
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と云う。
そうして見ると、銀行仲間を順繰りに呼んでは別れの騒をやって居るのと分るが、そんならそうで、ああ馬鹿放題な事をしずともと思われる。
怒鳴らなけりゃあ二度と此世で会われないと云った人もないだろうのに気の知れないにも法図がある。
このまことに驚くべき大餐宴が三日続いた最後の晩、弟は、押え切れない好奇心に誘われて到々垣見に出掛けた。
三十分ほども鶏舎のわきに立ち尽して帰って来ると、堪らず可笑しい様な顔をして話し出した。
部屋の障子も襖も皆はずされて居て一杯に人がならんで居る。
孝ちゃんのお阿母さんが水をあびた様にズベズベしたなりをしてお酒を運んだり何かして居ると、女中と清子が、とりすました白粉をつけた顔をならべて酌をして居る。
縁側に転寝をして居るものや、庭を眺めて居るものや、妙に肩を落して何かうなって居るものやら、玩具箱を引くり返した様にごちゃごちゃと種々な人間が集まって居る。
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「御馳走なんかろくにありもしないのに、
皆はしゃぎきっ
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