。
それでも案外なもので、猫も犬も掛らなかったらしいが、食物のせいか、あんまり運動が不足だったのか、幾日経っても卵のタの字さえ生まないので親父さんの内命を受けて遊びに来た孝ちゃんがどうしたのだろうと、家の鳥博士にきき出した。
新らしい鳥屋に入ってそこに馴れるまでは卵は生まないとか、たまには泥鰌《どじょう》の骨を食べさせて、新らしい野菜をかかさない様にと教えてやったそうだけれ共あんまり功はなかったらしい。
段々庭の様子に馴れて来た鳥はせまい竹垣の中では辛棒が仕切れなくなって大抵の時は、庭中にはねくり返って、縁側が土だらけになったり、食事をして居ると障子の棧の間から四つの首をそろえて突出したりする様になったので、日暮れに鳥屋に追い込む時の騒と云ったら、まるで火事と地震が一度に始まった様であった。
あんまり時間も早すぎるのだけれ共、あっちこっちと逃げ廻る鳥の早さに追いつけないので、二人の子供と女中と清子が裸足になって、
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「あらあら、そっちへ行きましたよ、
早くつかまえて下さい。
ああ、もう逃げちゃった、駄目じゃあありませんか坊っちゃんは、
鳥が来ると、貴
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