した人なら、するだけの事はうまく感じよくやってのけたかもしれないけれ共、いつもいつも、
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 もうもう此ではやりきれない。
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と云う様な根の抜けた目付をして居る様なので、子供はあばれ放題、下女は目の廻るほど呼び立てられて、悪口を絶やした事がない。
 どれだけの経済程度なのか知らないけれ共、子供にあれだけの装をさせて置ける位なら、最う少し体の好いちんまりまとまった生活が出来そうなものだがと、思う事がちょくちょくあったりした。
 まるで、私の家族とは方面の違った仕事をして居る人達なので、私共の家族が余程変って見えたらしい。夕飯頃帰って来ると、じきに小さい者を対手にふざけたり、唇の間から上手にフルートの様な音を出して皆を面白がらせたりして居る父親も注意を引いたには違いないけれ共、いつでも、少くとも十六の目玉の黒点になって、フッフッと煙を上げそうになって居るのは、私であった。
 裏には、私位の女が居ないからとも云えるけれ共、到底私に想像出来ない好奇心を以て、一寸裏にさえ出れば、私の足の出し工合から、唇の曲げ方まで注意して居て呉れる。
 パサパサな髪を
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