共。
 後で聞けば小屋のまとまりのつくまで殆ど半日、垣の隙から、こわらしい眼を光らせて睨んで居たと云う。此の事は家中の者が皆いやがった。
 他人の家の仕事に嘴を入れて、いくら世話を焼いて居る者が子供だからと云って、下らない批評などを加えると云う法はない。家を侮辱した事だとか何とか云って居ると、二番目の角力の様な体をした弟が、
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「僕行って云ってやりましょうねお母様。
 実にけしからん。
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と頭を振ったり何かしていきりたつので、笑ってすんでしまいはしたけれ共、あんなじゃあきっと銀行でも毛虫あつかいにされて居るのだろうと思うと、旦那様、お父さんと一角尊がって居る家の者達が気の毒な様にもなったりした。
 極く明けっ放しな、こだわりのない生活をして居られる私共は、はたのしねくねした暮し振りを人一倍不快に感じるので、どうしても裏の家を快活ないい気持なと思う事が出来なかった。
 何より彼より、一番大まかで、寛容でなければならない筈の主人が、重箱の隅ほじりなので、事実以上に種々思って居た事が無いでもあるまいと正直なところ思う。
 それでも奥さんがピリッと
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