ウィリアムの処から盗んだその雄白鵞鳥が現れて来たのです。
笛吹きが叫びました。
「ああ全く私と阿母さんとでその白鵞鳥をすっかり食べて仕舞ったんです。だけれども、たった左方の翼のところだけはのこして赤毛のメリーにやりました。彼奴《あいつ》が、教父に私が白鵞鳥を盗んだんだと云いつけたのです」
白鵞鳥は卓子《テーブル》を片づけ部屋の外に持ち出しました。ところでプカが笛吹きに注文しました。
「この方達のお慰みに音楽を奏してあげなさい」
笛吹きは云われる通り笛を吹きました。年を取ったお婆さん達は其音につれて踊り出し、皆へとへとになる迄踊り抜きました。踊りがすむと、プカは笛吹きに礼をやってくれと頼みました。お婆さん達は一人のこらず黄金の一片ずつを出して笛吹きに与えました。彼の悦びは大したものです。
「パトリックのおかげで、私は王様の子みたいに金持ちになったぞ」
「さあさあ、私と一緒に来なさい」
プカが笛吹きに命じました。
「私が家へ連れて行ってやるから……」
軈《やが》て二人は連れ立って外に出ました。そして、笛吹きが今にもプカの背中に来た時通りの肩車をしようとしていると、其処へさっきの雄
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