伸子がいた。やはり机に向ったまま、
「この間はどうもありがとう」
 保に温室を見せてもらった礼をいった。
「どうしまして……」
 素子があがるようにいわないので伸子も黙っていた。
「――一服させて貰うよ」
 玄関から竹村はひとりであがって来て、素子のいる座敷の敷居ぎわへ自分で座蒲団をもち出した。素子はそのまま仕事をしている。伸子はとよ[#「とよ」に傍点]にお茶をたのんだ。竹村はその辺にあった雑誌をよんでいる。
 そのまましばらくの間三人は黙ってばらばらにいたが、伸子にはそれが気づまりだった。そんなに放り出しておくほど竹村にたいして日ごろ内輪のつきあいをしているわけでもない。素子の声にもそぶりにも竹村が予期しないとき来たのをよろこばない調子が見えている。竹村の方ではまた、その感じをどこかでおしきろうとしているところがある。どうせ落ちつかなくなってしまった伸子は机をはなれて、隣座敷へ出て行った。
「どうして? もうあのカーネーションはみんなきってしまったの」
「いやまだ三分の一ぐらいのこしてある。――何君といったっけな、君の弟さん」
「保」
「ああ、保君か、案外くわしいんだね。玄人だよ。土
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