決しそうになった。
そこへ素子が外出さきから戻って来た。
「おや、これは珍らしいお客さんだ」
素子が椅子にかけるとすぐ、伸子は、
「もっと珍らしいことがおこったわ」
全集に一冊加えて、伸子の旅費が出そうなことを話した。
「それゃよかった。企画としたって、あれだけ揃えるなら、そういうものも一冊はあるべきですよ」
素子は、ちらりと皮肉な笑顔をして、木下にウェストミンスタアをさし出しながら、
「でも木下さん、大丈夫ですか、あなたの一人合点で。――殿様はそうおっしゃいましたそうですが、と、あとから御用人が出るんじゃないんですか」
「相かわらず辛辣だなあ。――そんなことはない。大丈夫です。必ずひきうけました」
数年前、アメリカへ行ってしまっている村田壽子と素子は、昔、親しいつきあいがあった。素子が村田壽子の作品を選んで決定することになり、伸子は自分で、一番はじめに発表した小説と、最近単行本になりかかっている長篇とを入れることにきめた。
「それぐらい具体的になっていれば結構だ。じゃ、ひとつ楢崎さんの方へは、直接社から話させますから」
木下が去ったあとしばらく、伸子は、焦点のちったような
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