的移行って、一人一人にとって、たとえば、あなたやわたしにどういう風におこるんだと思う?」
「ぶこちゃんは、それが生れつきなんだろうけれど、いやんなっちゃうな」
赤インクのついたペンをもったまま素子はほんとにいやになるようにわきに立っている伸子を椅子の上から見上げた。
「いつだって、こうだ、知ってるかい自分で――こんどだって、あの本見つけて来たのは、わたしだよ。ぶこちゃんは、うちにただ坐ってたんじゃないか。わたしは用で外へ出なくちゃならない。すると君は坐ってそれをよんでいる。そしてどんどん吸収して生長してゆくんだ。いつだってそうだ。わたしがきっかけをつくる、それをわきからとってものにしてしまうのは、ぶこさ」
素子は、暗い眼でじっと伸子を見すえた。
「そこがおおかた力のちがいというもんなんでしょうがね……」
奥歯をかみあわせたような辛辣さで云った。
「……わたしは、ぶこに食われるのはごめんだよ」
なにかいおうとして伸子は唇をすこしあけた。けれども、なんといってよいかわからなかった。暗い素子の視線のなかには、そんなに複雑にそして本気に伸子をつきのけるかげがあった。でも――伸子は素子と
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