ゆる草木や地面からしめりけというしめりけを蒸発させて暑くかわき上っていた空の模様が変って、八月に入ったある夜、雷鳴につれて豪雨があった。
素子は、まだ京都から帰っていなかった。奥の座敷に広々とつった白い蚊帳のなかで、ひとり床に入っている伸子は、じっと目をあいて凄じいその雨の音をきいていた。茂った竹藪の竹の葉や手入れのされていない松の枝、自然な萩のしげみなどをうっておちる雨の音は柔かく幅ひろくとどろいて、そのとどろきは、しずかにねている伸子の背なかに、つたわって来るようだった。雨戸の上についた欄間のガラスから時々稲妻の青白いひらめきが白い蚊帳の上に光った。一瞬の燐光に射出された天地がたちまちまたもとの暗黒にもどるとき、豪雨はしばらくの間一層きつくなったように感じられる。雨量の大きさには、忍びこみはじめた秋が思われた。伸子は自分のからだばかり不思議にぬれずに、季節の橋の上に横たわっているような心持がした。庭の夏草の根を洗って流れる水は、床の下に淙々《そうそう》と流れている。
夜なかのこの豪雨を、やっぱり蚊帳の中によこたわりながらおそらく目をあいて聴いているひとがある。伸子は、そのひとの
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