子は、素子らしく、
「畜生! どうしたんだろう、このあくび!」
とわが身をつねるように罵るそばから、あくびはとまらず、青年は、おだやかに慰めた。
「疲れたんですよ。――よっぽど疲れたんだ」
 しかし、何かの機会はすぎてしまった。
 余りあくびが出つづけて妙にからだがくたくたに力抜けしてしまった素子は、その岩のところまで戻って来た一行と合流し、みんなにたすけられて宿へ戻った。
「しゃっくりというものは、二十四時間つづくと死ぬっていうが、あくびはどうですかね、そういうことはないんだろうね」
 奄美《あまみ》大島生れの、髭の濃い教授は、それが若い女性であるということで一層こころもとなさそうに、まだときどきぱふと口をあけては苦しそうにあくびをしている素子をかえりみた。
「若いご婦人は笑いがとまらない、ということはきいているが、――どうも……こういうこともあるものかな」
 医者のよびようもなくて、おいおい素子のあくびはおさまった。それから数年をへだてて素子はまたその青年とあった。そのときは仙台であった。青年はもう地方官としてそこにつとめていた。素子は、自分からそのひとを訪ねて行ったのであった。そ
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