子がきいた。保は、
「そうしようと思わなくたって、そうなっちゃう」
 困惑したようにいった。
「どっちの議論だって、よくきいてみて、相手に勝とうとさえ思わなければ、みんなそれとしては理窟があるんだもの」
「それゃそうかもしれないけれどさ……」
 伸子は妙な顔をした。保のあの不思議に執拗な「公平」がまた出て来た。
「だって、――議論なんてものは、真中に一つ問題があって、それをはっきりさせるために起るんでしょう? だもの、てんでんばらばらに、一つずつの議論がそれとして理窟をもっているというのが眼目にはならないんじゃないの。中心の問題にとって、正しいとりあげかた、正しい解釈というものが当然ある筈じゃないの」
「うん」
「だからさ、正しい結論が出るまでの議論には、見当ちがいなのもあるわけでしょう? そして、それはすててゆくのよ。みんなそれとして[#「それとして」に傍点]理窟がある、というようなのは、変だわよ。――そう思わない?」
「…………」
「保さんが、みんなの議論してるとき、あれもこれもそれとして[#「それとして」に傍点]正しいなんていえば、それは調停派だか何だか、ともかくおかしなことだし
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