い初夏の庭がある。伸子の眼はそのまばゆい緑をじっと眺め、まばゆさのために瞳孔を細くちぢめているほどだ。だのに、伸子が外景からうける感じは変に黒かった。樹々の緑色が黒とまじり合って濁って感じられるのではなく、まばゆい純粋な新緑の美しさはそのままくっきり目に映っており、それが伸子の心に来る途中に、しまったシャッタアのように強情な黒さがあるのであった。
 喪にいる、という言葉を、伸子は思い出した。喪の黒さとは、こういうものかと思った。しかし、伸子は悲しんでいるのではなかった。一つも悲傷はなかった。ただ奇妙な、不自然な、信じることの出来ない混乱が充満している。誰からも話しかけられず、考えの内側に好奇心をもたれず、きょう一人でいられることが伸子にうれしかった。
 きのう、動坂の家で多計代が越智と結婚しようと思うといい出したとき、伸子は全力をつくしてその不可解なことを、わかろうと努力した。自分としては必死にわかろうと努力しながら、多計代に対しては、最大の慎重さをもとめた。本能的にそうせずにいられなかったほど、越智と母との結婚という観念は伸子にうけとりがたかった。
 思えば、不思議でもある。ああやっ
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