て、子供たちはじっとしていたが、その柵を通りすぎてしばらくすると、うしろから、
「ヤーイ狐の嫁入り!」
と、はやしたてた。
ぎらつく日のきらいな伸子が、白い大きなハンカチーフの端を髪の上にかけ、つみ集めた花をもっていない方の手でかつぎのようにもう一つのはしをもって、西日をよけながら歩いているのであった。
二十五
旅券が下附されて、ソヴェト大使館の裏書がとれるまで、伸子は旅行のことについて動坂に知らすまいと思っていた。
「ぜひ、そうしましょう。さもないと、あんまり騒々しくなっちゃうから、ね」
多計代がこういうことを知れば、たちまち賑やかすぎることになるのは必定であった。
この予定は、或る日素子が、
「ぶこちゃん、厄介なことになりそうだよ」
と、当惑げな顔つきでよそから帰って来たことで、番くるわせになった。素子がきょうソヴェト関係の記者である友人にあったら、伸子と素子との裏書は、そう簡単にかかれないかもしれないと注意されたのだそうだった。
「――どうして?」
「どうもはっきりしたことを云わないからよくわからないんだけれどね、われわれの素姓《すじょう》を、むこうじゃ信用しないという意味らしい」
「素姓って……」
「なにものか、と思うらしいのさ」
伸子は、ありえないという表情で、
「おかしいじゃないの、ちゃんとわかっているじゃないの」
と云った。
「あなたは翻訳家だし、わたしは作家だし……どっちもきのう開業したわけでもないのに……」
素子は、赤いすきとおるパイプを口の中でころがしながら、考え深い眼つきでしばらく黙っていたが、少し声を低くして、
「政治的な意味があるんだね」
と云った。
「案外、諒解が必要だ、というようなことなのかもしれない」
ソヴェト革命記念祭のお客に、日本から国賓が招待されたとき、その人選や連絡のために斡旋した文化連絡員がいる。素子はその外国人の名をいった。
「それゃ民間の女でゆくのは、私たちがはじめてなんだから、一応面倒なのもわかるけどね」
きいている伸子は、次第におこった顔つきになって行った。
「わたしたちが、もしいわゆる無産派でないからっていうなら、それこそ馬鹿らしいことだと思うわ。そういう立場でさえあれば、すべて素姓がたしかだとでもいうの?」
「しかしね、ぶこちゃん」
いつもに似合わず、素子の方が沈着に、亢奮し
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