ひとこと、ひとことをうちこめるようにいった。
「世間の習慣では、そういう子供はかわいそうね。でも、罪悪かしら――一人の女のひとがその子の母親となるようになった動機が罪悪といえるかしら――」
 伸子にそうは思われなかった。
「でもね、当然母親になるはずの女の人と子供とを、そういう条件においておく男があれば、それは罪悪的だわ。子供が生れる生れないにかかわらず、よ。世間が、どうみる、みないに、かかわらず――そうでしょう?」
 よくいいあらわせなくて、伸子はもどかしげに目ばたきした。
「そういう条件だのに、それなりずるずるに進行した全体の関係そのものが変よ――まして一方に、もうちゃんと出来上った家庭生活があったりすれば……」
 いっているうちに自分にも少しずつ細部が明瞭になって来て、伸子は、
「その意味では女のひとにだって、同じだけ責任があるわけだわ、知らなかったのではないんだもの」
といった。
「愛なんて、ほんとに愛なはずだのに――紛糾や怨ではないはずなのに――妙ねえ。なぜ、こんなに、どこでもかしこでも愛はごたごただの苦しみだのなの? ほんとに、なぜ? 愛が苦しみだなんて――」
 ほんとうに、伸子のまわりのどこに、愛の発露とはこうもあろうか、と、目を奪われる眺めがあるだろう。佃と自分とがからみあいもつれあって生きたあの姿。母と越智との空虚な、しかも力いっぱいの葛藤。そして、母と娘との感情においてさえも――。伸子はその中から自分をもぎはなすように、頭をふっていった。
「ね、勇気をふるってね。いやな苦しいいきさつの中から、一番ましな部分をつかまえるのよ。生れるものを堂々と生れさせるのよ。生むことを堂々と認めるのよ。父親は逃げた。それだって、その女のひとは子供を愛しているのだわ、そうでしょう? 愛はそのひとのものだわ、そうして、子供も……。子供には子供の人生を生かしてやるのよ」
 のり子の、また鉛色にかえったまぶたの下から、とめどなく涙が溢れた。のり子は、涙を抑えていたハンカチーフを口にあてて、声を忍んで嗚咽しはじめた。伸子は座をはずした。
 ほどたってから、伸子が新しくこしらえた飲みものをもって座敷へ戻って行こうとすると、のり子が、どうしたのか隣室の襖ぎわへ来て立っていた。
「――気もちがわるくなったの?」
おどろいて、伸子がたずねた。
「いいえ」
 のり子は半分ぼうっとなっ
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