機微に属することをきいたりするのかと伸子は怪しんだ。
「どうして、わたしが知っているの?」
「だってさ――いずれ文学に関係をもっている女のひとだろうからさ」
「知らない」
 伸子は、いとわしそうに眉根をくもらして首をふった。
「相川良之介のようなひとが一緒に死のうとまで思ったくらいなら、おそらく、よっぽど魅力のある女のひとだったんだろうねえ」
 それらの言葉から母の関心の焦点がのみこめた。
「相川さんの細君というひとは、いずれ平凡なひとなんだろう?」
 ――またはじまった! 心のうちで叫ぶように感じ、伸子は出窓にかけていたからだを思わずおこした。あんまりいやな気持がした。
「そういう比較はするもんじゃないわよ。誰が知っているの? そんなこと!」
 漠然と語られている女人の方に魅力があって、細君の方は平凡なひとだと勝手にきめてかかる、そのいやしさは伸子の胸をしぼった。越智の若い妻についてもいつか多計代はなんといっただろう。自分と、どう比較しただろう。相川夫人についていまいっている、そっくりそのままをいった。その後、越智とのいきさつがああいう風に結末しても、多計代がそこから学んだのはただ越智を軽蔑するという一つのことだけしかなかったのだろうか。
「……ほんとに、誰なんだろう――」
 いやな顔をしてかたく黙っている伸子の横前で、紺ちぢみの品のいい蛇の目しぼりの浴衣の袂をうごかして、多計代はきった爪をとりあつめた紙を丸めて屑籠にすてた。
「相川良之介でさえ、やっぱりかげではこんな女のひととのかかりあいがあったんだものねえ――どうして男って、みんなこうなんだろう」
 多計代は、
「つくづく厭になって来る!」
 嫌悪をこめていった。
「男なんてものは、誰だって信用出来ゃしない。かげではなにをしているのかしれたもんじゃありゃしない。――相川さんの細君だって、きいてごらん。きっと、その女のひとのことなんか、最後まで知っちゃいなかったに違いないんだから」
 強情にだまりつづけている伸子に、ほとんど挑戦するように、
「もう私は、決して男の勝手をゆるしゃしないから!」
と力をこめて多計代がいいきったとき、伸子はからだのどこかを指環のはまった女の拳でこづかれるように感じた。
「日本の女はなにをされたって泣きねいりばっかりしているから男はほうずがありゃしない――どっちをみても幻滅さ」
 多計
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