して、
「どうぞ。みんな非常によろこんでいます」
 二人のどちらとも云わず、一寸腰をかがめた。素子は、はためにもわかるほど椅子の上に体を重くした。
「ぶこちゃん、何とかお云いよ」
「困った――何て? ね」
 押問答しているうちに、人々の間から元気のいい、催促するような拍手がおこった。
「ダワイ! ダワイ!」
 そういう声もする。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]についた翌日、馬方が馬をはげましていた陽気なかけ声をきくと、伸子は何を何と云っていいのか分らないままに、赤い布で飾られている演壇に上った。小さい伸子の体がかくれるように高い演説者のためのテーブルをよけて、演壇のはじっこまで出て行った。すぐ目の下から、ぎっしりと男女組合員のいろいろな顔が並んで、面白く珍しそうに、壇の上の伸子を見上げた。その空気が伸子を勇気づけた。伸子は、ひとこと、ひとこと区切って、
「みなさん」
と云った。
「わたくしは、たった二週間前に、日本から来たばかりです。わたしは、ロシア語が話せません」
 すかさずうしろの方から、響のいい年よりの男の声で、
「結構、話してるよ」
というものがあった。みんなが笑っ
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