、発音出来ますよ。やって御覧なさい」
これは伸子にとって思いがけないことだった。恐縮してそちらを見ている伸子に、素子はちらりとながしめをくれながら苦笑した。そして、
「この次まで練習しておきましょう」
ブィラは保留となって、女教師はかえった。
女教師のうしろでドアがしまるとすぐ、伸子は壁にくっついている長椅子とテーブルの間から出て来た。
「――妙ね、あれ、どういうの?」
「なにがなんだかわかりゃしない」
「わたしのブィラが、ほんとによかったの?」
「いいんだろう」
素子は一二度マッチをすりそこなってタバコに火をつけた。そして、その吸いくちの長いロシアタバコに、パイプをもつときのように指をかけてふかしながら室の中央に向けてずらした椅子にかけて考えていたが、
「ぶこちゃん」
不機嫌な声のままで云った。
「なあに」
「わたしが何かやっている間は、この室から出ていてくれよ」
「――そうしたっていいけれど……」
その間自分はどこにいたらいいのだろう。伸子は当惑した。ぶらぶら雪の夜街を散歩するほど伸子はまだモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]に馴れていなかった。考えてみれば、日
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