に、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]生活の動的な色彩をまざまざと感じるのであった。
荒廃にまかせられている大屋根は、もとガラス張りの天井で、トゥウェルスカヤ通りの勧工場であった。だから、パッサージ(勧工場)ホテルという田舎っぽい名が、この小ホテルについているのだろう。質素というよりも粗末なくらいのこの小ホテルは、ドアに貼り出してある献立をのぞいては入口にホテルらしいところがないとおり、建物全体にちっともホテルらしさがなかった。表のドアの内側は、一本の棕梠《しゅろ》の鉢植、むき出しの円テーブルが一つあるきりの下足場で、そこから階段がはじまっていた。大理石が踏み減らされたその階段を二階へ出ると、狭い廊下をはさんで、左右に同じような白塗りのドアが並んでいる。一室の戸は夜昼明けはなされていて、そこがこのホテルの事務室だった。二階から四階までの廊下に絨毯《じゅうたん》がしかれていた。黒地に赤だの緑だので花や葉の模様を出した、あの日本の村役場で客用机にかけたりしている机かけのような模様の絨毯が。――
伸子は、この絨毯に目がついたとき、そのひなびかげんを面白がり、その絨毯を愛した。こ
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