「ニスがなめらかにかけられていて、伸子はなじみにくかった。
部屋へかえって、伸子は素子に、
「わたしルイバコフの方がすきだわ」
と、ふくれた顔で云った。
「ここの連中は、ミャーフキー(二等車)にしか乗らないときめてるようなんだもの」
素子は、
「まあいいさ」
と、伸子の不満にとりあわず、それぞれに風のある家の仕くみを興がるようだった。
「ここじゃ、アニュータが実質上の主婦だね。あの太った婆さんで全体がもててる感じだ」
おそく生れたらしい娘にかかりきりになっている細君にかわってソコーリスキーの家庭の軸がアニュータのおかげで廻転している。それが一度の正餐でもわかった。アニュータの給仕ぶりは自信と権威とにみちていて、いかにも、さあ、みなさんあがって下さい。いかがです? という調子だった。アニュータは、主人の地位をほこっていて、そこで権威を与えられている自分自身に満足している様子だった。
二日目の午後、伸子たちは下町の国際出版所へ出かけ、正餐にやっと間に合う時刻に帰って来た。その日は朝から初雪だった。二人が外套についた雪をはらっているところへ、ノックといっしょにドアがあいた。そして、耳
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