A次の日になってから、散歩している公園の橋の上でふっと云った。黙っていて、やがて伸子は確信があるように断言した。
「父じゃないわ、それはたしかよ。もしそんなことなら、別な電報のうちようがあるもの。――それに……たしかに大丈夫!」
伸子は、もし万一父の身の上に変ったことでもあれば、あの電報があんなにはっきりとそれにさからう心持を自分におこさせる筈はないと思った。最近は父というものについても伸子の心にこれまでとちがった判断が加えられて来ていたけれども、まだ伸子は仲のいい父娘としての心のゆきかいを信じていた。多計代に変ったことのないのは、あの電文そのものが、多計代の娘に対する物云い癖をそのままあらわしていることでたしかだった。家族の一人一人の消息を心のうちに反復してみても、伸子には見当がつかなかった。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]を立って来るとき受けとったハガキで、保が、この夏は大いに自転車ものりまわし愉快にやってみるつもりですと書いてよこしていた。その文章も、伸子はよくおぼえていた。
デーツコエ・セローの郵便局から伸子がジジヨウシラセと東京の家へ電報した三日目の夕刻だった
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