ニへ並んだ。その大群集や物売りたちは、日曜日になると、デーツコエ・セローの鬱蒼とした公園にうちよせるソヴェト生活のピチピチした波だった。伸子は、その波の波うちぎわにいる自分を感じながら、二つに畳める円テーブルの一つのたたみめを壁にくっつけて、ベッドに背中がさわりそうな僅のすき間で毎日少しずつ小説を書いた。
三
八月にはいって間もない或る雨の日のことであった。きのうも一日雨であった。しっとり雨をふくんだ公園の散歩道にパラパラと音をたてて木立から雨のしずくが落ちかかり、雨にうたれているひろい池の面をかなり強い風が吹くごとに、噴水が白い水煙となってなびきながらとび散った。
人っこ一人いない雨の日の大公園で、噴水を白く吹きなびかせている風は、パンシオン・ソモロフのヴェランダのよこの大楓の枝をゆすって、雨のしずくを欄干のなかまで吹きこませた。この北の国の夏が終りに近づいた前じらせのように大雨が降っている古いヴェランダの端から端へとぶようにして、老嬢のエレーナと伸子とがマズルカを踊っていた。いつものとおり黒ずくめのなりをしたエレーナの細くて力のある手が、くいこむようにきつく
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