ェらその一方では日本の常識の中での両性生活のやりかたについて絶望していたような気持も、段々社会の変化と一致して変化する可能のあるものとして希望の方に向けられた。
ゴーリキイやアンナ・シーモヴァの人間らしさに、完全な性が保たれ、咲き揃っている。そのことを伸子が、美しいと感じうらやましいと感じるのは、人間達成の可能のゆたかさへの共感であり、すすみゆく社会の本質が個々の男や女に与える可能性の意味ふかい承認だった。
おとといの晩、伸子たちはレーニングラードの一つの横通りにある外務省の留学生沖のアパートメントに招かれた。そこには、沖の一時的な愛人である蒙古の眉、蒙古の口元、蒙古の濃い黒髪をもったヨーコという女医がいた。ほかに七人ばかりの外務省の留学生たちがいた。重く太い編み下げを蒙古服の背にたらして、おとなしく台所の間を往復するヨーコの姉という、原始的な皮膚をした女のひとがいた。だらだらとつづいた食事やいくらか葡萄酒によった会話の、どこに本ものの愉快さがあったろう。みんなが自分を馬鹿者でないと思っていて、日本の官僚主義や退屈な社交生活を軽蔑して話しながら、自分たちのその話しぶりそのものが無気
前へ
次へ
全1745ページ中421ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング