ネ眼で見据えた。そして、ふん、というように顔をそむけ、その顔をもどして、
「わたしへ遠慮はいらないよ」
と云った。
「そんなに咲き揃いたいんなら、さっさと咲き揃ったらいいじゃないか。――さいわい、ここなら、内海君とちがった男たちもいるんだから」
かたく、大きく見開かれた伸子の目の前で、素子は挑発するように伸子を見ながらパイプをもっている片手で自分の顎から頬へさかなでした。
「――せいぜい全き性を発見するさ!」
ガスへバッと音をさせて火がついたように、伸子の気持が爆発した。
「それはどういうことなの」
素子につめよろうとする衝動をやっと制しながら窓ぎわから伸子がひしがれた声で反問した。
「何の意味?」
「わかってるじゃないか」
「わからなくてよ――なにを思いちがいしてるんだろう……」
厭《いと》わしさで伸子の唇が蒼ざめた。
「わたしは――複雑に云っているのよ」
素子は明らかにかんちがいしているのだった。伸子が云った全き性という感じや、咲き揃うということを、じかに男は女との関係、女は男との関係という風にだけうけとったのだ。しかもその関係というものを、素子の狭い傾いた主観の癖で、直
前へ
次へ
全1745ページ中417ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング