ォ片仮名ワ、1−7−82]の人々にまじって歩きながら、伸子はこの群集の流れの中で、あの赤インクのかぎ[#「かぎ」に傍点]を負っているのは自分だけだと思うと変な気がした。わきに並んで、時々腕をくみ合わせたりして歩いている素子にさえ、伸子のその奇妙な感じはわかっていない。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の生活は、伸子を、日本にいたときはあることさえわからなかった広い複雑な社会現象のなかへつき出した。伸子はそれだけ自由にのびやかになった。そしたら、これまで気づかずにいたいろんな意味での赤インクのかぎ[#「かぎ」に傍点]が、自分にかかっていて、周囲に動いているモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の人たちにはかかっていないことを、見出しているのだった。
こういう心の状態で夜の並木道《ブリ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ール》を散歩しているときなどに、伸子がもうちょっとで素子に話しそうになっては、話さなかった一つの気もちがあった。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来る年の秋、駒沢の奥の家に素子と住んでいたころ、素子が買って来て伸子も読んだブハーリンの厚い本の
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