[デイじゃないか」
 伸子たちとルイバコフとの間の日頃の約束では、朝晩しかお湯はわかさないことになっていた。
 伸子が台所へ行ってみると、さっき入口をあけてくれたニューラの姿が見えない。ルイバコフの細君や子供も出かけてしまったらしく、アパートメントじゅう、ひっそりとしている。伸子は、自分たちの水色ヤカンが、流しの上の棚にのっているのを見つけた。伸子は、ニューラが見えないのに困った。うちのものが誰もいない台所で、勝手なことをするようなのがいやで、伸子は水色ヤカンを眺めながら、半分ひとりごとのように、
「ニューラ、どこへ行っちまったの」
 節をつけるようにひっぱって云った。すると、台所のガラス戸のそとについているバルコニーからニューラが出て来た。何をしていたのか、すこし上気《のぼ》せた顔色だった。
「歩いたんで、喉がかわいたのよ、ニューラ。お湯をもらえるかしら」
「よござんす」
 ニューラはすぐヤカンをおろして水を入れ、ガスにかけた。
「ありがとう。お湯はわたしがとりに来るから」
 そう云って台所を出ようとした伸子に、ちょっとためらっていたニューラが、
「ここへ来てごらんなさい」
 バルコ
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