ノ立っていた新聞の特派員とその細君に会釈した。大柄な体に、薄手な合外套のボタンを上までしめている特派員はいくらか近づいて来るようにしながら、
「あなたがた、最近の日本の新聞を御覧でしたか」
と伸子たちに話しかけた。
「――最近のって云ったところで、わたしたちのは、どうせ幾日もかかってシベリアをやって来るんですがね――何かニュースがあるんですか」
「日本の共産党事件――よまれましたか」
「ああ、よみました――ひどく漠然とした記事ですね、何が何だか分らなかった」
「――そう云えばそうだが、吉見さんなんか、あらかじめこっちへ逃避というわけじゃなかったんですか」
 うす笑いをしながらそういう特派員の言葉を、素子はぼんやりした顔つきできいていたが、急にその特派員の方へくるりと向きかわって、
「冗談にしろ、そんなこと、迷惑ですよ」
 きめつけるように、真顔で云った。そして、秋山宇一をかえりみながら、いくらか皮肉な調子をこめて、
「秋山さんこそ、どうなんです?」
と云った。
「あなたは、大丈夫なんですか」
「今も塩尻君に様子をきいていたところですがね」
 例の癖で自分に向ってうなずくように首をふりな
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