サれを追うように伸子たちも無言で速く歩いた。午前十時から赤い広場の行進がはじまる、その三十分前に、参観者たちは広場の中のきめられた場所へ到着しているように指定されているのだった。
 猟人広場まで来ると、もうトゥウェルスカヤ通り一杯につまって、行進が定刻の来るのを待機していた。大きい赤地のプラカートをもった行進の先頭はトゥウェルスカヤ通りが猟人広場に向ってひらく鋪道のギリギリの線まで来ていて、ゆるく上りになっている通りをずっとかみてへ見渡すと、トゥウェルスカヤ通りは、目のとどく限り人と赤い旗の波だった。左右の高い建物の窓から窓へとプラカートが張りわたされている。広場をこして大劇場通りの方を眺めると、こっちにはモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の商業地帯、官庁地帯から出て来た幾列もの行進で、赤く賑やかにつまっている。いまにも溢れんばかり街すじに漲っている巨大なエネルギーを堰《せ》きとめて、特別清潔に掃除されている猟人広場の石じきの空間は、けさ全く人気が少なかった。ところどころに、整理のための赤軍兵と民警が立っているだけだった。
 きれいに掃かれてがらんとしている猟人広場を横ぎって
前へ 次へ
全1745ページ中344ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング