gキン全集がつまれていた。伸子は偶然、一九一七年から二一年ごろに出版された書物だけが雑然と集められている台に立った。その台には、ひどい紙だし、わるい印刷ではあるが、この国内戦と飢饉の時代にもソヴェトが出版したプーシュキン文集だのゴーリキイの作品集、レルモントフ詩集などが、今日ではもう古典的な参考品になってしまったプロレトクリトのパンフレットなどとまじっている。
伸子がその台の上の本を少しずつ片よせて見ているところへ、素子が、より出した二冊の背皮の本をもって別な本棚の方から来た。
「なにかあるのかい」
「――この間のコロンタイの本――こういうところにならあるのかしら」
「さあ。――何しろもうまるでよまれてないもんだから、あやしいな」
素子が勘定台へ去ったあと、なお暫く伸子はその台の本を見ていた。
一週間ばかり前日本から婦人雑誌が届いた。それに二木準作というプロレタリア作家が、自分の翻訳で出版したコロンタイ夫人の「偉大な恋」について紹介の文章を書いていた。二木準作は、その作家もちまえの派手な奔放な調子でコロンタイの恋愛や結婚観こそ新しい世紀の尖端をゆくモラルであり、日本の旧套を否定す
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