ェ伸子の興味をひいた。白髪で金ぴかの服装の僧正が、香炉の煙のなかでとり行う復活祭の儀式は、復活祭の蝋燭を手にもって祈祷の区切りごとに胸に十字を切っている年とった連中にとってこそ信仰の行事であろうが、多数の若い男女にとっては、ただ伝統的な観ものの一つとしてうけとられるらしかった。そういう感情のくいちがいからあちこちで、群集の間に口喧嘩がおこっていた。それは、人間の歴史のつぎめにあるエピソードであり、伸子はそれが書いて見たかった。
 相変らず時々ひどい音をたてて電車がとおる。そのたびに机の上のコップにさされているミモザのこまかい黄色の花がふるえた。伸子は自分の心の中で何かと格闘しているような緊張を感じながら書いて行った。
 モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の印象記を書こうとしはじめてから、伸子はこれまで経験されなかったその緊張感を自覚した。その感じは、書き進んでも消えなかった。ソヴェトの社会現象はその印象を書きはじめてみると、ひとしおその複雑さと嵩のたかさとで伸子を圧倒しそうになるのだった。
 モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の印象記を、伸子は、自分が感じとったまま
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