ト来たバケツをおろした。張りわたした綱がひっかけられている大釘の上の壁に、アパート番号がはっきり書かれている。ニューラはダブルベッド用の大シーツや下着類を、いそいでその綱に吊るしはじめた。伸子が砂の上に佇んで待っているのでニューラは気が気でないらしく、
「じきです――じきです」
とくりかえした。
「いいのよ、ニューラ、いそがないでやりなさい。わたしはいそいでいないのよ。鍵をしめておけば、こわくもないわ――ニューラは?」
 ニューラは、すぐに返事をせず綱に沿って横歩きにものを干しつづけていたが、
「すこしは、ましです」
と、ぶっきらぼうに答えた。伸子は笑った。天井の低いうす暗いもの干場の空気はしめっぽくて、そこからぬけたことのない石鹸のにおいがした。
「きょうは、どうして、夜もの干しに来たの?」
 伸子が、その辺を眺めながら、ニューラにきいた。
「きょうは洗濯日じゃなかったんです」
「――じゃ、特別?」
「ええ。――さっき、洗ったんです。|奥さん《ハジヤイカ》は、いそいでいるんです」
 不恰好に長い腕を動かしながらものを干している若いニューラの見すぼらしい姿を、伸子は可哀そうに思った。ソ
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