ッ集注した感情で、話すのはめずらしいことだった。
伸子は、素子のいおうとするところを理解した。けれども、語学のできない伸子は、素子とちがってすべてがそうであるとおり目で見て来たゴーリキイ展からあんまり自分に照らし合わせて考えさせられる点をどっさりうけとって来ていた。
こういうことは、伸子と素子との間でよくあった。
ソヴェトにおけるゴーリキイの芸術についての評価ということになると、伸子には伸子らしく目で見えることから疑問がなくはなかった。伸子たちがモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来て間もない頃リテラトゥールナヤ・ガゼータ(文学新聞)にゴーリキイの漫画がでたことがあった。乳母のかぶるようなふちのぴらぴらした白いカナキン帽をかぶった老年のゴーリキイが、揺籃に入れた「幼年時代」をゆすぶっているところだった。伸子はその漫画に好感がもてなかった。その意味で印象にのこった。今年になってからも何かの雑誌にゴーリキイの漫画があって、それではゴーリキイが女のスカートをはかせられていた。スカートをはいたゴーリキイが、炉ばたにかがみこんで「四十年」という大鍋をゆるゆるかきまわしている絵だっ
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